盲道

原題 Blind Way
製作年 2017
製作国 中国
監督 リー・ヤン
脚本 リー・ヤン
撮影 王 博学
出演 李 楊、 杜 函梦、 胡 明、 于 越

監督の李 楊(リー・ヤン)は『盲井』『盲山』『盲道』という “盲” 三部作で、中国の社会問題をリアリティ度の高い犯罪サスペンスとして描いており、『盲井』は2003年ベルリン国際映画祭で銀熊賞・芸術貢献賞を受賞しています。『盲山』も『盲井』のリアリズムを引き継ぎ、観客を絶望から更に深い絶望へと導きます。山での盲目が地理的な孤立だとすれば、今回の都会での盲目は誰もが利益ばかりに目を向けた “人間性の欠如” かもしれません。

リー・ヤンは映画監督を目指して中国青年芸術劇院に入った後、北京放送学院テレビ学科の演出プログラムに入学した。しかし2年間通った後、当時の彼女を追いかけるために突然中退してドイツに渡ってしまう。ドイツで10年以上働いた結果、最初の映画『盲井』を製作する前は300万元以上の貯金があり、当時の北京では10戸のマンションが買えるほどの金額でした。しかし、3作目の『盲道』を製作した後は無一文になり、銀行口座にはほとんどお金が残っていませんでした。そう、この作品はまったく評価も収益も得ることができなかったのです。

この作品を制作するにあたり、リー・ヤンは北京、貴陽、西安を訪れ、盲人芸術団、救護所、盲学校などを訪ねて少なくとも20人の盲人にインタビューし、ホームレスの子供たちにも多数インタビューを行った。しかし投資家の関心が薄かったため、映画の予算は極めて低額でした。さらに悪いことに、撮影途中で出資を予定していた投資家が撤退してしまいました。そこで彼は自宅を抵当に入れ、高金利のローンを組まざるをえませんでした。監督自身が主演しているのは、俳優を雇う予算が無かったためです。更に友人に金銭的な援助を求め、複数の実業家から投資してもらうことで、何とか制作を終えることができました。1年以上の審査期間を経て、ついに映画は公開されます。しかし公開から最初の4日間で、興行収入はわずか29万6000元(約700万円)でした。リー・ヤン自身も映画の出来栄えにはあまり満足していないと認めていますが、観客に公開するためには妥協せざるを得なかったのも事実です。撮影が始まった頃から、興行収入が伸び悩むだろうと分かっていました。しかし彼は気にすることなく、「もし気にしていたら、そもそもこの映画を作らなかっただろう」と語りました。

では『盲井』はどうやって資金を集めたかというと、ドイツで貯めた自己資金と海外(特に香港)からの出資だそうです。また、中国国内の正規ルートで製作された映画ではなくゲリラ的に撮影された低予算映画で、中国映画局からは「違法製作」と見なされています(それもあって国内上映禁止になった)。『盲山』も主に海外の華人の個人出資によって賄われ、プロの俳優を起用しない低予算映画でした。一方、『盲道』はリー・ヤン監督が「中国映画局からも認められて観客に届かせたい」という思いから正規ルートで製作せざるを得ず、そうすると収益性も厳密に見られるため、結果的に出資を受けられなかったようです。

そういった理由から大きな制約を受けて製作に臨みましたが、出来上がった作品を観た観客の大きな落胆の一つは、これまでのリアリティや史実に基づいたサスペンス性が無くなり、都会を舞台としたテレビドラマのような演出になっていたからです。偏狭な地方を題材にしていれば自然と『盲井』『盲山』のようなリアリティが生まれたかもしれませんが、都会でリアリティを再現するには、細かな設定や作りこみが圧倒的に足りませんでした。主人公はカツラを被っただけでは社会の底辺で生きる詐欺師にはなれず、少女も杖を持っただけでは盲人になれないのです。そして『盲井』や『盲山』では物語が進むだけで、何の説明が無くても観客は恐ろしい状況を浴びるように理解できる説得力がありましたが、この作品はそうではなくセリフで状況を説明します。また、悪の根源が社会構造ではなく、”悪い親” や “犯罪組織” 程度に縮小しているのです。ラストも諦念や絶望感ではなくテレビドラマのような終わり方をするので、「これまでの作品で見せた映像と物語と衝撃は何だったのか?」と思ってしまうのです。

ただ、前半で感じた印象に比べると後半は徐々に深刻度が増し、「また “無意識の社会悪に飲み込まれる” ような絶望的ラストになるのでは?」という期待が膨らみました。個人的にはあのラストさえ違っていれば、もっと評価は高かったと思います。

 

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