コート・スティーリング

原題 Caught Stealing
製作年 2025
製作国 アメリカ
監督 ダーレン・アロノフスキー
脚本 チャーリー・ヒューストン
音楽 ロブ・シモンセン、 アイドルズ
出演 オースティン・バトラー、 レジーナ・キング、 ゾーイ・クラヴィッツ、 マット・スミス、 リーヴ・シュライバー、 ヴィンセント・ドノフリオ、 ベニート・マルティネス・オカシオ、 グリフィン・ダン、 キャロル・ケイン

この映画はダーレン・アロノフスキー監督における『ストレイト・ストーリー』です。奇才デヴィッド・リンチ監督が自らのワールドを完全に封じ込めて作ったまさかのヒューマン・ドラマに、映画ファンは「こんな映画も作れるんだ」と度肝を抜かれました。それと同じように、これまで “自らが作り出した強迫観念に追い詰められる主人公” を描き続けてきた奇才アロノフスキー監督が、まさか猫を中心とした犯罪コメディ娯楽作を作る姿に「こんな映画も作れるんだ」と度肝を抜かれます。だからラストでリンチ作の代表的女優だったローラ・ダーンが出てくるんですね。内容的にはド直球のヒューマン・ドラマだった『ストレイト・ストーリー』に対し、こちらはこれでもかと投げつけられた変化球を “Go Giants!” なオースティン・バトラーが死に物狂いで打ち返す感じですが… ちなみにリンチ監督もアロノフスキー監督も、歴史SF大作『デューン 砂の惑星』『ノア 約束の舟』で大いに失敗しています。

この映画はダーレン・アロノフスキー監督における『スナッチ』かもしれません。娯楽作の帝王ガイ・リッチー監督のように主人公がトラブルに巻き込まれて複数の悪党に追われ、誰が敵だか分からなくなり、暴力性にコミカルが交じり、最後は何となく丸く収まる。どちらもユダヤ人(スナッチは偽物ですが)の2人組やロシア系犯罪グループが出てくる辺りも一緒です。ちなみにリッチー監督もアロノフスキー監督も、歴史SF大作『キング・アーサー』『ノア 約束の舟』で大いに失敗しています。

アロノフスキー監督によると、今回は一度自分のテーマを外れて『π』で監督デビューを果たした1998年のNYを舞台に娯楽作を作りたかったそうで、原作選びやテンポの良い演出など意外な娯楽センスを見せつけました。それでもきっとリンチ監督のように、重苦しいあのアロノフスキーワールドにまた帰ってきてくれると信じています。オースティン・バトラーは本当のアロノフスキー作品で重苦しい主人公を演じ切ることができたら、ナタリー・ポートマンやブレンダン・フレイザーのようにアカデミー主演男優賞を獲れるかもしれません。それを期待してしまうくらい、役者としての存在感も演技も素晴らしい俳優だと思っています。また、お洒落でパンクなエンドロールは、神経質な映画ばかりだったこれまでと一味違うアロノフスキー監督の美的センスが出ていました。

 

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